5月に入ってから、6年生の算数の授業では『速さ』の問題を取り扱っています。
これまでの経験上、5月の段階で速さの問題をしっかり理解して解けるようになる生徒はほとんどいません。
何となくわかったような気になって次に移る生徒が大部分で、人によっては単位変換や線分図のごちゃごちゃした感じに押しつぶされて、早々に理解をあきらめる生徒も出てきます。
速さの問題の難しいところのひとつは、「見えるものではない」ところにあると思います。速く動く物自体は見えているのですが、「それがどんな速さなのかが表現しにくい」のが難点ですね。
物が動くスピードが「速い」「遅い」というのは、小さい頃から積み重なった色々な経験や感覚でわかっているものです。
走る速さ、ボールを投げたときの速さ、自動車の速さ。
かたつむりの遅さ、幼児が歩くスピードの遅さ、自動車と比較した自分の遅さ。
世の中には動くものがたくさんありますから、それを目で追うことで、あれは速い、遅いといった感覚上の「速さ」は何となくわかります。
ですが、「どのくらいの速さなのかを説明しなさい」と言われたとき、速さの勉強をする前は「自動車と同じくらいの速さ」とか「犬くらいの速さ」といったように何かと比較するか、あとは「ビューン!」とか「シュッ」とかのオノマトペで説明することしかできません。
そこで現れるのが『分速〇m』などの速さの単位。
たとえば
「分速200m」=「そのまま1分間進み続ければ、1分後には200m先にいるくらいの速さ」
という解説を授業でされる。
すると、「自分が今まで『自転車くらいの速さ』と言っていた速さは『分速200m』だったのか!」と、感覚と数値が結びつくわけです。
さらに、これまで漠然と聞いていた「車の速さ60キロ」というのが『時速60km』であったことに気が付いて、単位の奥深さに感銘を受ける。野球ボールの『時速150km』でも構いません。
そして自分の50m走の記録から、自分の走る速さも数値として解釈できるようになる。
つまり、これまで感覚でしか表現できなかった速さが、数値を得ることによってデータとして納得でき、そこから色々な事象へ応用できるようになっていくのです。
このあたりに算数を勉強する意義があるような気がします。
一度理解できてしまえば、速さの問題は感覚的にかなりわかりやすい部類に入ると思います。
入試算数の必須範囲ですから、早めに会得しておくに越したことはありません。
車に乗ったり、野球中継を見たりするたびに、速さを数値で意識し、理解を深めてもらいたいものです。
そして、とりあえず人の歩く速さを時速50kmだとか答えるようなことは無くなってほしいと思う桜井でした。